高齢者人口が増加の一途を辿るのに比例して、介護・看護を必要とする高齢者も増えています。
それに伴い、介護に従事しなければならない人も増えていますが、核家族化が進んでいる現代社会では、「家族の介護」の場面では一人一人の負担は大きくなっています。
昨今「家族の介護」のために離職を決断することを余儀なくされるケースが増加していますが、介護を行う人が40歳代から50歳代といった、会社の中でも比較的重責を担う立場にある人が多いため、このような立場の人の介護離職が多くなることは、会社にとって大きな損失です。
介護による離職を少しでも減らすために、事業所として今、そしてこれから何に取り組むべきでしょう。
今回は、この介護離職への対応について取り上げます。
調査によれば、介護に関する具体的な不安として、
が多く挙げられています。
(株式会社wiwiw「仕事と介護の両立支援事業 社内アンケート(事前)」平成26年度厚生労働省委託事業より)
介護はいつ必要になるかわかりません。
突然訪れるその時の為に、従業員にあらかじめ介護を行う労働者が利用できる制度や公的給付について周知しておくことが大切です。
制度 | 概要 |
---|---|
介護休業 | 労働者は申し出ることにより、対象家族一人につき通算93日間、3回を限度としてとれる。 |
介護休暇 | 対象家族が1人なら年に5日まで、2人以上なら年に10日まで、半日単位でとれる。 |
所定労働時間の短縮等の措置 | 事業主は、①短時間勤務制度、②フレックスタイム制度、③時差出勤制度、④介護サービスの費用助成のいずれかについて、介護休業とは別に、利用開始から3年間で2回以上の利用が可能な仕組みを作らなくてはならない。 |
所定外労働の免除 | 所定外労働の免除を1回の請求につき1月以上1年以内の期間で請求できる。 |
法定時間外労働の制限 | 1か月に24時間、1年に150時間を超える時間外労働が免除 |
深夜業の制限 | 免除 |
転勤に対する配慮 | <事業主は配慮しなくてはならない |
不利益取扱いの禁止 | 事業主は、介護休業などの申出等を理由として解雇などの不利益取り扱いをしてないけない。 |
介護休業給付金 | 介護休業をした場合、一定の要件を満たせば、介護休業開始時の月額賃金の67%が最長3カ月支給。 |
※介護休業とは、「介護を行うための期間」ではなく、「今後、介護と仕事を両立させるための準備期間」、つまり、ケアマネージャーへの相談、市区町村窓口への申請手続き等、介護サービスを受けるための期間として利用できます。
介護の問題は少子高齢化の現代において、社会全体で取り組む問題です。
上記の内容を社内ミーティング等で従業員に周知しておくことで、介護離職を防ぐ一助になると思います。
明治大学の安蔵教授の説によれば、日本の少子化はすでに40年前から始まっているそうです。
ちなみに、合計特殊出生率(女性が一生の間に生むとされる子供の平均数)が2.07を確保することができれば、「人口置換水準(人口を維持できる数値)」を保っているとされており、この水準を継続的に下回る現象が「少子化」です。
日本は1973年の2.14を境に低下しはじめ、2005年には過去最低の1.26まで低下しました。
その後2012年には1.41まで回復したとされるのですが、これは第二次ベビーブーム世代の女性が、様々な努力で産んでいる現象でしかないそうです。
今後、母親人口は確実に減少し、出生率がこのままの水準で推移すれば2300年には日本の人口は約360万人に激減すると予測され、年金、介護などの社会保障が崩れるばかりでなく、国家の保全もできない状況に陥る可能性があります。
ここで安蔵教授の着目点を見てみます。
実質的な出生率、つまり「結婚している女性が産んだ子」と「結婚している女性人口(有配偶女性)」の比率についてみると、1970年以降、この「有配偶女性に関する出生率」の大きな減少は起きていません。
つまり、結婚した女性が生む子供の数は、40年前と大きな変化はないのです。
では何故出生率は低下し続けたのかと言えば、未婚化(婚姻率の低下)が影響しているということになります。
実際のデータをみると、30歳から34歳の女性の未婚率は、1980年に9.1%だったものが、2010年には34.5%、同じく35歳から39歳女性の未婚率は、5.5%から23.1%と4倍以上に激増しています。
そして、その傾向は男性も変わらず、35歳から39歳の男性の未婚率は1980年には8.5%だったが、2010年には35.6%まで増加しています。
このデータから少子化の原因は「未婚化」が主因と考えられ、また「晩婚化」に伴う出産年齢の上昇は「第三子出生」を減少させ、さらに「第二子出生」へも影響し「不妊」問題につながっていくことが考えられるそうです。
では、なぜ「未婚化」、「晩婚化」、「晩産化」が進んでいるのか。次回に続きます。