決められた賃金をベースにして算出する特別な賃金には、時間外手当、休日手当のような割増賃金を計算するときに使う1時間あたりの賃金額や、解雇予告手当、労災の休業補償に使う平均賃金などがあります。
同じ人の同じ賃金から算出するのですが、実は、これらの計算方法は同じではありません。
今回は、割増賃金と平均賃金の計算方法の基本について簡単にまとめてみます。
割増賃金の率は、以下のように定められています。
割増賃金率 | 時間外労働 | 2割5分以上 (1か月60時間を超える時間外労働については5割以上 (注1)) |
---|---|---|
休日労働 | 3割5分以上 | |
深夜労働 | 2割5分以上 |
(注1)中小企業については当分の間、適用が猶予されます。
そして割増賃金額は以下のように計算します。
割増賃金額
=
1時間あたりの賃金額
×
時間外労働、休日労働、
または
深夜労働をした時間
×
割増賃金率
問題はココ
1時間あたりの賃金額
月給制の場合は、
月給 ÷ 月における所定労働時間数
『月における所定労働時間数』
各月によって所定労働時間数が違う場合は、1年間を平均して算出した1月当たりの平均所定労働時間で計算するとわかりやすいです
平均賃金を計算する必要があるのは、「解雇予告手当」や使用者の都合により休業する場合に支給する「休業手当」、労災で休業するときの「休業補償」などがあります。
平均賃金は、上記の割増賃金の計算の場合とは違い、「労働者の生活を保障する」という概念があることから、通常の生活の賃金の総額をその期間の歴日数で除した金額となります。
例えば…3月31日付で即日解雇するために解雇予告手当30日分を計算するとき賃金締切日が15日の場合の計算例
期間 | 日数(歴日数) | 金額 |
---|---|---|
12/16~1/15 | 31日 | 328,000円 |
1/16~2/15 | 31日 | 289,400円 |
2/16~3/15 | 28日 | 278,920円 |
合計 | 90日 | 896,320円 |
問題はココ
平均賃金 =
896,320円 ÷ 90日 = 9,959円11銭
9,959円11銭 × 30日 ≒ 298,774円
が支払金額になります。
「休日」と「休暇」は言い回しが違うだけで内容は同じだと思われがちですが、意味はまったく違います。
割増賃金にも影響しますので、どのように違うのかの認識は、未払い賃金を防ぐためにもとても大切です。
今回は、この休日・休暇について取り上げます。
休日と休暇では、まず労働の義務があるかないかで違いがあります。
さらに
休日については、労働基準法第35条で以下のように定められています。
つまり
使用者は1週間に1日、又は4週を通じて4日以上の休日を必ず与えなくてはなりません。
この休日は労働基準法に定められている休日なので、通称「法定休日」と言われます。
これに対して使用者が独自に定める休日を「法定外休日」と呼び、土曜日、祝日、会社の創立記念日、夏季休暇、年末年始休業などがあります。(※カレンダーで通知する場合が多いです)
法定休日に出勤した場合は35%の割増賃金を支払わなければなりません。
法定外休日に出勤を命じたために、その週の労働時間が40時間を超えると25%の割増賃金が発生します。
休暇には、
等があります。
(「休業」は法的な語句ではありませんが、休暇のうち、特にその期間の長いものを示す言葉として慣用的に使われています。)
年次有給休暇については、雇い入れの日から6箇月間継続勤務し、その間の全労働日に対して8割以上出勤した労働者については、最低10日、その後1年を経過する毎に一定日数を加算した日数を与えなくてはならないと定められています。
週の所定労働時間が30時間未満の労働者については、与える日数は少なくなります。
年次有給休暇以外の休暇については、有給にしなくてはならないという定めはなく、無給でも構いません。
就業規則が備え付けられている事業所では、無給とするか有給とするかを就業規則に明記しておく必要があります。
振替休日とは、あらかじめ、休日となっていた日を労働日として、その代わりに他の労働日を休日とすることを言います。
休日労働に対する割増賃金は不要です。
代休とは、突発的な業務などの対応により、あらかじめ予定していなかった休日労働をして、別の日に休みをとることを言います。
休日労働になるため、休日労働としての割増賃金が発生します。