人を雇う際には、どのような労働条件で雇うのかを、労働者に伝えなくてはなりませんが、その伝える方法は「書面」でなくてはなりませんでした。
しかし、今回の働き方改革の一環で書面以外の明示も可能になりました。
労働条件の明示は、「入社してみたら、聞いていた内容と違った」と多くのトラブルが見られ、事業主としても人を雇う際に、注意を要するものです。
今回はこのことについて取り上げます。
労働基準法第15条に
「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。」
と定められていて、「厚生労働省令で定める方法」については施行規則第5条第3項において、書面による明示と示されていました。
この労働条件通知書には「絶対的明示事項」として、必ず以下を明示しなくてはなりません。
しかし
ICT技術が発達し、契約書も電子署名によってクラウドを介して行われるようになってきているので、書面で交付しなくてはならない労働条件通知書は、非効率だ!ということが言われていました。
そこで
ただし、あくまでも、この電磁的方法が認められるのは、労働者の同意が前提のため、労働者が紙の交付を望んだ場合は、従来通り、紙で交付しなければなりません。
また、メール等の電磁的方法で交付した場合も、労働者が書面として出力できる場合に限ります。
参照元:厚生労働省令
「法定労働時間」に対して「所定労働時間」があります。
似ていますが、意味はまったく違います。また、他に「所定」という言葉がつくものには、「所定労働日数」、「所定休日」などがあります。「法定~」か「所定~」なのかによって残業代の計算も違ってきます。
今回は「法定労働時間」に対して「所定労働時間」についてとりあげます。
所定労働時間とは
就業規則や労働契約等で定められた始業時刻から終業時刻までの時間から休憩時間を差し引いた労働時間をいいます。
例えば、始業時刻が9時で、終業時刻が18時、休憩時間が1時間の場合、所定労働時間は、8時間になります。
これに対して
法定労働時間とは
労働基準法で定められている以下のことです。
使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない。
残業時間の計算が違います。
出番じゃ! 説明しよう
例えば、A社は、
始業時刻が9時、終業時刻が17時、休憩時間が1時間 だったとすると、A社の所定労働時間は、7時間になります。
この会社で9時間労働をした場合の残業時間の計算は以下になります。
7時間 | 所定 労働時間 |
||||
8時間 | [A] 割増不要 |
法定内 労働時間 |
|||
9時間 | [B] 25%割増 |
法定外 労働時間 |
1時間あたりの賃金が1000円だった場合、この日の残業時間代は、
[A] 1,000円 + [B] 1,000円×1.25% = 2,250円
になります。
「休日」と「休暇」は言い回しが違うだけで内容は同じだと思われがちですが、意味はまったく違います。
割増賃金にも影響しますので、どのように違うのかの認識は、未払い賃金を防ぐためにもとても大切です。
今回は、この休日・休暇について取り上げます。
休日と休暇では、まず労働の義務があるかないかで違いがあります。
さらに
休日については、労働基準法第35条で以下のように定められています。
つまり
使用者は1週間に1日、又は4週を通じて4日以上の休日を必ず与えなくてはなりません。
この休日は労働基準法に定められている休日なので、通称「法定休日」と言われます。
これに対して使用者が独自に定める休日を「法定外休日」と呼び、土曜日、祝日、会社の創立記念日、夏季休暇、年末年始休業などがあります。(※カレンダーで通知する場合が多いです)
法定休日に出勤した場合は35%の割増賃金を支払わなければなりません。
法定外休日に出勤を命じたために、その週の労働時間が40時間を超えると25%の割増賃金が発生します。
休暇には、
等があります。
(「休業」は法的な語句ではありませんが、休暇のうち、特にその期間の長いものを示す言葉として慣用的に使われています。)
年次有給休暇については、雇い入れの日から6箇月間継続勤務し、その間の全労働日に対して8割以上出勤した労働者については、最低10日、その後1年を経過する毎に一定日数を加算した日数を与えなくてはならないと定められています。
週の所定労働時間が30時間未満の労働者については、与える日数は少なくなります。
年次有給休暇以外の休暇については、有給にしなくてはならないという定めはなく、無給でも構いません。
就業規則が備え付けられている事業所では、無給とするか有給とするかを就業規則に明記しておく必要があります。
振替休日とは、あらかじめ、休日となっていた日を労働日として、その代わりに他の労働日を休日とすることを言います。
休日労働に対する割増賃金は不要です。
代休とは、突発的な業務などの対応により、あらかじめ予定していなかった休日労働をして、別の日に休みをとることを言います。
休日労働になるため、休日労働としての割増賃金が発生します。
8月、子供たちは既に夏休みを満喫していますが、日本では『大人が長期間の夏休みを楽しんでいる』という話を聞いたことはほとんどありません。
最近、アメリカ合衆国大統領が2週間の夏休みに入ったというニュースに少し驚きましたが、米国でも2週間は長すぎるという批判があるようです。
自由の国アメリカでは、休みを取ることも休みを取らずに働き続けることも自由だそうですから、批判の根拠はどうも別にあるようです。
ところがヨーロッパ、とくにドイツやフランスでは、2週間の夏休みを長すぎると批判することはないようで、それ以上に長い夏休みを交代で取得することは、昔から当然の文化として続いています。
さて、日本の多くの企業では今月中旬に夏季休業を実施します。
こうした企業が一斉に夏季休業を取るということは欧米にはなく、日本独特の企業の風習のようで、昔の藪入りが起源なのかもしれません。
ただし、我が国においても法律で休業日が決まっている官公庁や金融機関などでは独自に休業日を増やすことは認められず、職員や社員は交代で休暇を取得しています。
さて、こうした休暇を公務員や金融機関の方々は何日取得しているのでしょうか。
労働基準法が適用される民間企業の場合、年次有給休暇の取得日数は、保有日数内ならば本人の希望をかなえなければなりませんので、大統領並みの2週間の有給休暇希望を拒否することは出来ないのですが、実態は限られた人員の中で公平に休みを配分するために最大でも1週間程度が限度のようです。
長い夏休みが当然のこととして社会に認められるのは日本では難しいですね。
ところで、矢島社労士事務所も『8月11日の山の日から8月16日まで』お休みをいただきます。
ただし、緊急案件については対応いたしますので、何かありましたら電話でお知らせください。
ここで働く作業者がそれぞれ一つの品物を完成させるために、25歳のAさんは30分、65歳のBさんは1時間掛かります。つまり1時間でAさんは2個、Bさんは1個を完成させています。そこでこの会社はAさんにBさんよりも高い時間給を支払っています。
ところが最近の不況で値下げを余儀なくされ1個売っても700円しか儲かりません。Aさんは1時間に2個作れますから1,400円の利益に貢献してくれますが、Bさんは700円分しか貢献してくれません。年金で生活しているBさんはたとえ時給700円でも働かせてほしいと言いますが、最低賃金(岐阜県は713円)の定めがあり、Bさんにも最低賃金以上を支払わなければなりません。さて、会社はどうしたらよいのでしょうか?
労働基準法第11条では、賃金は「労働の対償として支払うもの」と定義され、賃金を労働時間に応じて支払うという文言はここには見当たりません。しかし、最低賃金法は厳しい罰則が定められている法律なのです。
今回の選挙では『日本維新の会』が最低賃金の廃止をマニフェストに掲げています。物価が下落しモノの値段が年々下がる時代にあって最低賃金廃止論は検討に値すると私は思いますが、皆さんはどう思われますか?