人を雇う際には、どのような労働条件で雇うのかを、労働者に伝えなくてはなりませんが、その伝える方法は「書面」でなくてはなりませんでした。
しかし、今回の働き方改革の一環で書面以外の明示も可能になりました。
労働条件の明示は、「入社してみたら、聞いていた内容と違った」と多くのトラブルが見られ、事業主としても人を雇う際に、注意を要するものです。
今回はこのことについて取り上げます。
労働基準法第15条に
「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。」
と定められていて、「厚生労働省令で定める方法」については施行規則第5条第3項において、書面による明示と示されていました。
この労働条件通知書には「絶対的明示事項」として、必ず以下を明示しなくてはなりません。
しかし
ICT技術が発達し、契約書も電子署名によってクラウドを介して行われるようになってきているので、書面で交付しなくてはならない労働条件通知書は、非効率だ!ということが言われていました。
そこで
ただし、あくまでも、この電磁的方法が認められるのは、労働者の同意が前提のため、労働者が紙の交付を望んだ場合は、従来通り、紙で交付しなければなりません。
また、メール等の電磁的方法で交付した場合も、労働者が書面として出力できる場合に限ります。
参照元:厚生労働省令
「正社員の求人だと思って応募したらパートだった」
「残業代は別途支払われると思っていたのに、固定残業代を払っているから残業代は払わないと言われた。残業代を見込んで生活設計をしていたのに」
など、いざ勤めてみると事前に公開されていた募集内容と違っていたという問題が多く発生していました。
こうしたトラブルを防ぐために、今年1月から職業安定法が改正されました。
今回はこの改正について取り上げます。
労働条件に変更があったら明示をしなくてはなりません。
ハローワークへの求人申込や自社HPにおいて求人を行う際には労働条件を明示しなくてはなりませんが、その明示していた労働条件を変更する場合は、速やかに知らせなくてはならないということが法律で明確になりました。 採用内定後は、今まで同様、「労働条件通知書」(書面)により速やかに明示しなくてはなりません。
例えば
① | 「当初の明示」と異なる内容の労働条件を提示する場合 |
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例) 当初:基本給30万円/月 ⇒ 基本給28万円/月 | |
② | 「当初の明示」の範囲内で特定された労働条件を提示する場合 |
例) 当初:基本給25万円~30万円/月 ⇒ 基本給28万円/月 | |
③ | 「当初の明示」で明示していた労働条件を削除する場合 |
例) 当初:基本給25万円/月、営業手当3万円/月 ⇒ 基本給25万円/月 | |
④ | 「当初の明示」で明示していなかった労働条件を新たに提示する場合 |
例) 当初:基本給25万円/月 ⇒ 基本給25万円/月、営業手当3万円/月 |
当初の明示内容を安易に変更することは避けなくてはなりません。
特に新規学卒見込者等については配慮が必要です。
変更の明示は、求職者が変更内容をしっかり把握できる方法で明示することが必要です。
当初の明示と変更された後の内容を対照できる書面を公布する方法が望ましいですが、変更する事項に下線を引いたり着色したりする方法、脚注をつける方法により明示することも可能です。
求人の際に明示しなくてはならない項目が増えました。
従業員にとっても、入社してみたら知らされていた条件と違っていたということになると、モチベーションは下がることになります。
そうなると会社にとっても良くありません。そうならないためにも、雇い入れ前に正確な労働条件を明示しましょう。