理想論


報道を見る限り厚生労働省の「毎月勤労統計調査」の実施方法に適切ではない部分があったことは間違いないようで、多くの国民が「厚生労働省はけしからん」と思うのは当然だと思います。
しかし、この毎月勤労統計調査に企業側の担当として関わっていた者としては、別の思いがあります。

従業員規模が何万人というような大企業には人事労務の専任がいますし、会社によっては社内の統計に関わる部署もあると思います。
そういう会社ならば調査依頼に対応する余裕はあると思います。

しかし、私の勤務していたような中堅規模の企業では、多くの会社で人事・労務・統計などの業務は兼任が当たり前で、更に経理や財務までも兼任している会社も珍しくありません。
また、どんな企業でも冗費の削減は最優先課題、直接収益を生むことの無い間接部門は真っ先に人員削減の対象ですからギリギリの人員で業務を回しているはずです。

厚生労働省の担当部署が東京都の従業員規模500名から1000名程度の企業に「毎月勤労統計調査」の依頼をしても、かなり強固な拒絶反応があったのだと私は思います。
私も同じように対象から外してほしいと何度も話をした記憶がありますから・・・。

毎日の仕事を定時で終われない環境なのに、手間の掛かる統計調査を引き受けると更に残業をしなければならない・・・しかし残業は減らせと命じられる。
こうした点に着目しないで理想論ばかり唱えても、本当の解決にはならないと思います。